ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンはほぼ問題なし|日焼け止めの成分チェック
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、化粧品の成分として含まれ、UV-B(280~400nm付近)、UV-A(310~345nm付近)の紫外線を吸収する働きが期待されています。ヘアコンディショニングや散乱剤にも利用されており、日焼け止め、ヘアケア用品などに含まれていることがあります。
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの特徴
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(別名:ベモトリジノール|英語:Bis-Ethylhexyloxyphenol Methoxyphenyl Triazine)は、分子量627.81276、化学式C38H49N3O5、比重1.109±0.06 g/cm3、CAS:187393-00-6で、試薬として購入する場合は25mgで3万円ほどする成分です。化粧品、日焼け止めに関しては、粘膜に使用しない場合は、40ml中1.2mlまでは入っていても問題はないということになります。
粘膜に使用しない化粧品では100g中3gまで使用可能、粘膜に触れる化粧品の場合は「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」を含めてはいけないことになっています。
安全性評価
アメリカではこの「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」は認可が追いついていないようですが、アジア、オーストラリア、ヨーロッパでは使用が認められており、ヨーロッパにおいては10%まで含めて良いとされています。
We investigated the effect of the introduction of a new UV filter, bis‐ethylhexyloxyphenol methoxyphenyl triazine (Tinosorb S), in oil in water sunscreen formulations on the photostability of butyl methoxydibenzoylmethane (Avobenzone [AVB]) after irradiation with an optically filtered Xenon arc source (UV irradiance adjusted at 1 mean effective dose [MED]/min). With spectrophotometrical methods to assess the sun protection factor (SPF) and UVA ratio and chromatographical methods to determine the amount of UV filters recovered after irradiation we showed that Tinosorb S prevented the photodegradation of AVB in a concentration‐dependent way, leading to a sustained SPF and UVA ratio even after irradiation with doses of up to 30 MED.
訳:光学的にフィルター処理されたキセノンアーク光源を照射した後のブチルメトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン[AVB])の光安定性に対する、水中油型日焼け止め製剤への新しいUVフィルター、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(Tinosorb S)の導入の影響を調査しました。(1平均実効線量[MED] /分で調整されたUV放射照度)日焼け防止係数(SPF)とUVA比を評価する分光光度法と、照射後に回収されたUVフィルターの量を決定するクロマトグラフィー法により、Tinosorb Sが濃度依存的にAVBの光分解を防ぎ、持続的なSPFをもたらすことを示しました。30 MEDまでの線量で照射した後でもUVA比、AVBはメトキシケイ皮酸エチルヘキシル(EHM)を不安定化することが示されているので、このUVフィルターの組み合わせを含む日焼け止め剤でTinosorb Sの効果をテストしました。ここでもTinosorb Sは両方のUVフィルターに対して光防護特性を示しました。したがって、Tinosorb SはAVBとEHMを含む日焼け止めの光安定性と効率を改善するためにうまく使用できます。30 MEDまでの線量を照射した後でも、持続的なSPFとUVA比をもたらします。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1562/0031-8655(2001)0740401POBMAA2.0.CO2
基本的に安定性が高く、他の不安定気味の紫外線吸収剤(ブチルメトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン:Avobenzone):Butyl methoxydibenzoylmethaneやメトキシケイ皮酸エチルヘキシル:Ethylhexyl methoxycinnamate)と一緒に「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」が含まれていると安定性が総合して上がるとの研究結果もあります。
粘膜への使用禁止
既に記載してある通り、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは、粘膜(目や口の中など)へ使用する化粧品には入れてはいけない成分です。お顔にも使える化粧品、日焼け止めでも、目に入ってしまうと刺激性がある可能性があります。十分に注意しましょう。
アレルギー・ホルモン作用なし
Because bemotrizinol is relatively new to the sunscreen market there are few reports or studies available documenting its adverse effects and long term use. Studies to date have shown it to have a good safety profile. It is not significantly absorbed into the skin and rarely causes skin irritation. Unlike some other organic sunscreen agents, in vitro studies show that bemotrizinol does not appear to have hormonal effects. Further long-term human safety studies are required.
ベモトリジノールは日焼け止め市場にとって比較的新しいものであるため、その悪影響と長期間の使用を文書化したレポートや研究はほとんどありません。これまでの研究は、それが優れた安全性プロファイルを持っていることを示しています。皮膚にあまり吸収されず、皮膚の炎症を引き起こすことはほとんどありません。他のいくつかの有機日焼け止め剤とは異なり、in vitroの研究では、ベモトリジノールにはホルモン作用がないようです。さらに長期の人間の安全研究が必要です。
ただし、まったく皮膚に吸収されないわけではないため、極微量は肌に吸収されていき、全身でこの微量の吸収が起きた場合にどうなるかは不明です。長時間の日焼け止めの使用は避け、日焼け止めを長時間6時間~12時間塗りっぱなしにするのはできるだけ避けて、日焼け止めクリームを使った日はきちんとお風呂に入って化粧品を落とすか、化粧落としでしっかり取り除きましょう。
半数致死量LD50(皮下摂取ウサギ)
ウサギの皮下摂取(Dermal)では、LD50は2000mg/kg以上とされています。
出典:https://s3-us-west-2.amazonaws.com/drugbank/msds/DB11206.pdf?1525386000
半数致死量LD50(経口摂取ラット)
ラットの経口摂取(Oral)では、LD50は2000mg/kg以上とされています。
出典:https://s3-us-west-2.amazonaws.com/drugbank/msds/DB11206.pdf?1525386000
経口摂取のものを人に置き換えると、体重60kgの人の場合は120gのビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを摂取すると半数致死量となります。50mgのビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを入手するのには約5万円ほど必要で、120gのビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを入手するには1億2000万円ほどかかります(計算あってるんでしょうか…?)。
通常の国内の日焼け止め40ml(SKIN AQUA水感ミルクNEW)などではボトル1本辺り1.2mlほどまでしか入れられないので、比重をガン無視して考えた場合、SKIN AQUA水感ミルクを100本ほど丸呑みすれば半数致死量の条件は満たされます。価格にして約600円×100本=6万円ほどで要件は満たしますが、40ml×100本は4,000ml(4リットル)なため、飲み込めない量ではないですが、実質無理があるかと思います。チューブで胃に流し込み続けるとかしないと無理です。また、SKIN AQUA水感ミルクに含まれている「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」の濃度が不明で、この想定よりも更に少ないはずなので、この10倍、100倍摂取したとしてもLD50を満たせるか分かりません。
出典
医薬部外品および化粧品中の紫外線吸収剤の分析に関する研究(第2報)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン,ホモサレートおよびメチルベンジリデンカンファを含む17成分同時分析法
https://ci.nii.ac.jp/naid/40017144334
ベモトリジノール
https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB1959495.htm
Investigation of Sunscreen Agents Added in Sunblock Cosmetics
http://wprim.whocc.org.cn/admin/article/articleDetail?WPRIMID=676807&articleId=676807(SSL化されていないため非リンク)
Bis-Ethylhexyloxyphenol Methoxyphenyl Triazine
EU化粧品規制
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=LEGISSUM:co0013