オクトクリレンは日焼け止めに入っていなくても良い【湿布に注意】

オクトクリレン(Octocrylene:CAS6197-30-4)は、化学式C24H27NO2、IUPAC系統名2-Ethylhexyl 2-cyano-3,3-diphenylacrylate、分子量361.485 g/molの化学物質です。化粧品、日焼け止めにしばしば利用されている物質で、日本語では(RS)-2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸-2-エチルヘキシルエステルと呼ばれます。上位互換できる物質があれば日焼け止めには入っていなくてもよい成分です。




オクトクリレンとは?

オクトクリレンは紫外線を吸収する性質があり、280nmから315nmの波長UVBと、315nm以上の波長UVAにまたがって、290nmから350nmの紫外線をわずかに吸収します。UVA、UVBともに吸収してくれる化学物質で、日焼け止めの成分としてそこそこ優秀です。常温常圧で黄色の粘性があるため、日焼け止めが多少黄色に見えるのはこのオクトクリレンが多少影響している可能性があります。

 

水には溶けず、日光刺激を受けても比較的安定です。ただし、紫外線の吸収力が格段に高いわけではないため、日焼け止めに一緒に含まれている他の紫外線吸収力の高い物質を保護する役目が期待されて、多くの日焼け止めに含まれます。化粧品100g中につき、オクトクリレンは10gまで含ませて良いとされています。

 

引火点は113度、融点は-10度であるため、北海道や東北など気温がマイナス10度を下回る日差しの強い場所ではオクトクリレンが入った日焼け止めは、少し固くなってしまいます。オクトクリレンを含んでいる日焼け止めがザラザラしているように感じる場合は、オクトクリレンが一部温度により個体に近い状態になっている場合があります。

 

引火点113度なため、BBQ、鍛冶場、ゴミ処理場など高音になる場所でオクトクリレンを多く含む日焼け止めが燃焼する可能性がありますが、実際の日焼け止めには多数の液体や物質が含まれているため、そうそう引火することはありません。オクトクリレン単体で保管する場合は取扱に注意が必要です。




人体への安全性

化学的に反応しやすい

引用(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Octocrylene#datasheet=LCSS&section=Stability-and-Reactivity

2-ETHYLHEXYL-2-CYANO-3,3-DIPHENYLACRYLATE is an acrylate ester derivative. Esters react with acids to liberate heat along with alcohols and acids. Strong oxidizing acids may cause a vigorous reaction that is sufficiently exothermic to ignite the reaction products. Heat is also generated by the interaction of esters with caustic solutions. Flammable hydrogen is generated by mixing esters with alkali metals and hydrides.

【日本語訳】

2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートはアクリル酸エステル誘導体である。エステルは、酸と反応して、アルコールや酸とともに熱を放出します。強い酸化性酸(硫酸や硝酸など酸化を伴う酸性の物質)は反応生成物を発火させるのに十分な、発熱性のある激しい反応を引き起こす可能性があります。エステルと苛性アルカリ溶液(水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのこと)との相互作用によっても熱が発生します。可燃性水素は、エステルとアルカリ金属および水素化物を混合することによって発生します。

 

ほとんどないと思いますが、日焼け止めを使用している方が、大学の研究室などで硫酸、硝酸と合わせて水酸化ナトリウムを使っている場合、肌や指先で触れてしまった際に反応が起きる危険があります。

化学系の研究生や卒論研究してる方はちょっと注意が必要かも。

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アリー

光増感刺激がある

引用

The process where a chemical makes the skin (or other tissues) prone to damage when exposed to light is called photosensitization. There is evidence that at least some chemical blockers can trigger the production of free radicals and thus cause photosensitization. In particular, the following blockers were shown to be potential photosensitizers: octocrylene, octyl methoxycinnamate (octinoxate), benzophenone-3 (oxybenzone) and benzophenone-4 (sulisobenzone). More research is needed to determine whether any of these or other absorbable chemical blockers can cause significant skin damage under the conditions of typical use.

The dark side of chemical sunscreens. Should you be concerned about photosensitization?

http://www.smartskincare.com/skinprotection/chemical-sunscreen-risks.html(非SSL化サイトなためリンクはしません)

【日本語訳】

化学物質が光にさらされたときに皮膚(または他の組織)が損傷を受けやすくするプロセスは、光増感と呼ばれます。少なくともいくつかの化学的遮断剤がフリーラジカル(反応しやすくなってしまった原子や分子のこと)の生成を誘発し、したがって光増感を引き起こす可能性があるという証拠がある。特に、以下のブロッカーが潜在的な光増感剤であることが示された:オクトクリレン、オクチルメトキシシンナメート(オクチノキサート)、ベンゾフェノン−3(オキシベンゾン)およびベンゾフェノン−4(スルイソベンゾン)。一般的な使用条件下で、これらまたは他の吸収性化学ブロッカーのいずれかが重大な皮膚損傷を引き起こす可能性があるかどうかを判断するにはさらに研究が必要です。

 

少し噛み砕いていうと、オクトクリレンは、光の影響を受けて、反応性の高い分子を間接的、直接的に生み出してしまう可能性があり、しかも、オクトクリレンは肌に吸収されて肌の正常な機能や新しい肌を作り出す機能を阻害する可能性があります。

 

オクトクリレンは、紫外線吸収性能だけで言えばそこまで期待できない上に、肌荒れを起こす可能性がある物質で、肌から吸収されてしまいます。つまり、極端にいうとオクトクリレンは、紫外線を少し吸収し、他の日焼け止め成分を守りながら、紫外線UVA・UVBで反応性の高い刺激の強い物質になりながら、肌に入ってきます。代わりになる物質、または、上位互換できる物質があれば、そちらを使用したほうが良いです。

お肌には良くないかもね。

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アリー

外用薬(ケトプロフェン含有)と併用ダメ

ケトプロフェン(ketoprofen):(RS)-2-(3-ベンゾイルフェニル)プロパン酸は、化学式 C16H14O3、分子量254.281 g/molの物質で光過敏症が起きやすい外用薬として有名です。主に医薬品として、肩こり、腰痛への処方薬として利用される事があります。湿布を使う時に、日光を当ててはいけないという事象と同じような感覚で、日焼け止めを使っていても、いなくても、湿布を使ったら、日光に当ててはいけません。

 

オクトクリレンとケトプロフェンは合わせてはいけない物質同士で、オクトクリレンを含んでいる日焼け止めを使いながら、ケトプロフェンなどを含む湿布を使い、しかも、日光に当ててしまうような使い方は、光過敏症を起こして肌が赤くなりますので、絶対にダメです。

湿布と一緒に使っちゃダメ。

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アリー

環境への安全性

引用(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Octocrylene#section=Safety-and-Hazards

Aggregated GHS information provided by 459 companies from 7 notifications to the ECHA C&L Inventory.

Reported as not meeting GHS hazard criteria by 13 of 459 companies. For more detailed information, please visit ECHA C&L website

Of the 6 notification(s) provided by 446 of 459 companies with hazard statement code(s):

H413 (90.13%): May cause long lasting harmful effects to aquatic life [Hazardous to the aquatic environment, long-term hazard]

Information may vary between notifications depending on impurities, additives, and other factors. The percentage value in parenthesis indicates the notified classification ratio from companies that provide hazard codes. Only hazard codes with percentage values above 10% are shown.

【日本語訳】

459社がECHA C&Lインベントリに提供した7つの通知に関するGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)情報の総計。 459社中13社においてGHS安全基準を満たしていないと報告されています。詳細については、ECHA C&LのWebサイトをご覧ください。 ハザードステートメントコードを含む459社のうち446社から提供された6つの通知のうち、 H413(90.13%):水生生物に長期にわたり有害な影響を与えることがある[水生環境に有害、長期の危険] 情報は、不純物、添加物、およびその他の要因に応じて通知間で異なる場合があります。括弧内のパーセント値は、危険有害性コードを提供している会社から通知された分類比率を示します。パーセント値が10%を超えるハザードコードのみが表示されます。

日焼け止めがついてる手でペットの熱帯魚のお世話はしないほうがいいかもね。

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アリー

環境省GHSについて

http://www.env.go.jp/chemi/ghs/

PubChem NCBI

https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Octocrylene

ECHA

https://echa.europa.eu/




結論:あってもなくてもいい物質

オクトクリレンそのものは日焼け止めに無理に入れる必要はない物質です。オクトクリレンよりも紫外線吸収力があり、安定性が高い物質があれば、それだけ入っていれば問題ありません。オクトクリレンは紫外線と反応して、肌荒れや肌の弱体化を招く可能性があるため、オクトクリレンが入っている日焼け止めはできれば使わない方が良いです。

 

少量であれば問題はありません。ほとんどの日焼け止めには少量しか含まれていないのでたいてい問題ありません。

Posted by Medic