人の表皮層の仕組みと構造&働き【角質層・顆粒層・有棘層・基底層】
人の肌の一番表面部分は表皮と呼ばれます。角質、顆粒、有棘、基底という4つの層に分かれており、人体からの水分蒸発量の調節、外界の病原菌からの保護、紫外線からの保護、薬品や化学物質からの保護などを主な役目としています。細胞の生まれ変わりによりターンオーバーが繰り返されて、日々新しい皮膚に置き換わっています。
表皮の構造と働き
表皮(厚さ0.041mmから0.268mm)には既に述べたように4つの層が存在していて、それぞれに状態が異なります。結論から言えばそれぞれの層は表皮の成熟段階によって呼び方が違うだけで個別に、特別な役割があるわけではありません。
上記の図解で基底層にうっすら見える紫色の部分はメラノサイト(色素細胞:全体の5%)と呼ばれるものです。それ以外の細胞はケラチノサイト(角化細胞:全体の95%)と呼ばれます。他にもランゲルハンス細胞と呼ばれる細胞群がありますが、上記の図解では省略しています。
角質層
表皮のバリア機能のメインを担っているのが角質層です。10層から30層ほどパイ生地のように重なってできており、ケラチンを介して互いにタンパク質が結合していて、タンパク質保水によって構造が保たれています。
マリー
若い人の肌が水を弾くのはこの角質層が保水できてるからね。加齢及び乾燥とともに角質層が水分を少し吸うようになるね。一応、油ははじく。
手のひら、足の裏で最も分厚くなっています。皮膚科医の公表データ(リンク)によると
- 目のまぶた 7層
- 頬(ほっぺた) 10層
- 全体・全身 14層
- 手のひら・足の裏 50層
- 外陰部 6層
というように皮膚の角層の厚さが異なっています。顔の皮膚(10層)は薄く、身体全体の皮膚(14層)とそれほど差はありませんが、身体用を顔に使うと皮膚が薄い分、影響は強く出てしまう可能性があるということになります。
※測定データはこちらから
爬虫類で言えば剥がれ落ちる鱗みたいな感じ。一番外側。
アリー
顆粒層
たくさんのケラチノサイト:角化細胞によってできている層でエキソサイトーシスという能動輸送により角化細胞の外側は脂質バリアが形成されています。
マリー
この顆粒層は脂っこい感じ。角質層は水っぽい感じ。脂溶性の成分は、角質層を超えて浸透しないと、この顆粒層に届かないの。
簡単に言えば、水の膜(角質層)と、脂質の膜(顆粒層)で肌をガードしてる感じ。
アリー
有棘層
この有棘層において最も大事なのが、免疫系の働きを持つとされるランゲルハンス細胞があることです。お肌の免疫系を守っているともいえるのが、この有棘層です。
細菌感染や寄生虫に気づいて闘い始めるよう指示を出すのがこの有棘層。ちなみに読み方は有棘層(ゆうきょくそう)です。(ありとげそう)ではないです。
アリー
基底層
角化細胞と色素細胞が混在している場所で、肌の神経系と密接に関わりがあります。日焼けするのもこの層で、触った感覚がするのも、肌のこの部分があるおかげです。肌表皮の細胞が増えていくのもこの基底層です。
日焼けする部分で、かつ、触感(接触を感知する神経)と関係があるの。
アリー
表皮の断面図
出典:Epidermis
実際の表皮断面は厚さ0.041mmから0.268mmほどしかありません。当メディア自作の図解では有棘層がだいぶ分厚いですが、上記の断面画像ではかなりスリムであるように見えます。
表皮及び真皮の詳細構造
出典:あたらしい皮膚科学PDFより
こちらの画像で見れば表皮において最も重要なのは角質層から基底層の部分よりも体毛が生えている部分、アポクリン汗腺、エクリン汗腺などの部位でしょう。真皮は非常に複雑ですが、主に毛根、コラーゲン組織、毛細血管、リンパ管などが主要だと考えておいて間違いないです。
表皮から栄養は吸収されるのか
表皮に与えられる栄養素は、表皮の角質層と顆粒層あたりまでと考えるのが無難です。はっきり言えば、ほとんどの栄養は真皮までは届いていないと考えるべきです。
こじつけで「ある」と言うとすれば、毛根と皮膚の間の毛細管現象で少し栄養が届くかもね。ゼロではないけれど、言うほど多くはないです。
アリー
これは、顆粒層の脂質によるバリアがあるため、吸収させようとする化学物質が脂溶性、親油性の物質で、かつ、微小粒子でなければ「水と油」の関係で浸透していきません。
肌は外界から体を守るためにあるものなので、そう簡単に肌から何かを吸収させるなんてことはありません。
どうしても表皮を経由して栄養吸収したいなら、血管に直接栄養を送るのが一番効率的です。肌に何かを塗りたくって、そこから栄養吸収させられるのはせいぜい表皮のいずれ剥がれ落ちていく角質層から基底層までです。
日焼けの正体は基底層のメラノサイト
別途、詳細をまとめますが、この基底層にあるメラノサイト(色素細胞)が日焼けとともにメラニン色素を排出して、周囲のケラチノサイト(角化細胞)に届けます。これにより、よく紫外線にあたる人の肌はメラニン色素の影響で日焼けします。
日焼け止めは角質層に紫外線を吸収してくれる薄い層を作って、メラノサイトを日光で刺激しないようにしている、という仕組みです。
参照リンク
【Wikipedia】Epidermis
参照元:https://en.wikipedia.org/wiki/Epidermis
【Wikipedia】Integumentary system
参照元:https://en.wikipedia.org/wiki/Integumentary_system
あたらしい皮膚科学
参照元:https://www.derm-hokudai.jp/textbook/pdf/1-01.pdf
にのみや小児科・皮膚科
参照元:http://www.2-38.net/esthetic/guide/structure/index.html
超音波断層撮影装置による顔面皮膚厚の測定(Measurement of facial skin thickness by ultrasound method. )
参照元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj1979/23/4/23_4_316/_pdf