肌・皮膚の常在菌・表皮菌の科学【3種類の菌に守られている】
人の肌、体には黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、アクネ菌の3種類の菌がいるとされています。もっとたくさんの種類の菌が棲んでいますが、主なものはこの3種類です。この菌達がいるおかげで人の肌は他の菌から守られており、必ずしも悪い菌とはいい切れません。持ちつ持たれつの関係でお肌の健康が守られています。
皮膚には3種類の菌がいる
皮膚にいるとされる菌は大雑把に分けて以下の3種類です。
- 黄色ブドウ球菌
- 表皮ブドウ球菌
- アクネ菌
これらの菌たちがバランスを保ちながら、お肌の健康を維持しています。
本当は3種類どころじゃなくいーーっぱいいます。
アリー
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、学名(Staphylococcus aureus)、直径1μm程度の大きさの通性嫌気性グラム陽性球菌です。菌体そのものは熱で処理できますが、生成されてしまった毒素(エンテロトキシン:Wikipedia)は100度で長時間(20分以上)煮沸しても無毒化しません。
やばい系の病気を招くのはたいていこの子。
サニー
手のひら、にぎり寿司、卵、肉などだいたいの食品にいて、調理中に手指を怪我した場合にもその時点で調理を止めるのは、この黄色ブドウ球菌とその毒素が関係しています。食塩濃度18%でも生育します。コアグラーゼのようなもので無敵状態になっちゃうこともある(参考:はたらく細胞第10話)とのことです。
黄色ブドウ球菌の毒素量が100ng~数μgだと、食中毒を起こすと言われています。極微量でも食中毒・敗血症などを招く可能性があります。ちょっとした怪我(擦過傷)でも免疫力が異常に下がっていると皮膚にいる黄色ブドウ球菌に負けて敗血症を起こす可能性があります。舐めてかかってはいけない存在です。
参考:食品安全委員会
http://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/09staphylococcal.pdf
表皮ブドウ球菌
表皮ブドウ球菌は、学名(Staphylococcus epidermidis)どこにでもいるグラム陽性球菌です。
人体の体内に入れられるモノ、注射針、カテーテル、人工の心臓弁などから体内に入るとちょっと厄介な存在ですが、黄色ブドウ球菌のような毒素はない存在です。
注射針の使い回しがダメなのはこいつが理由。
アリー
必ずしもその限りではないですが、判定の要素の一つとして、コアグラーゼというフィブリンによる菌体保護をしないブドウ球菌は表皮ブドウ球菌だと考えてよいでしょう。
泌尿器付近にいるブドウ球菌は腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus)と呼ばれて分類されています。この腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus)は尿路感染症の要因となります。
参考:日本内科学会雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/97/11/97_2673/_article/-char/ja/
アクネ菌(アクネ桿菌)
アクネ菌、アクネ桿菌は、学名(Propionibacterium acnes|Cutibacterium acnes)、大きさは幅0.4μm~0.7μm、長さ1μm~5μmと非常に小さい通性嫌気性菌です。
1cm2当たりに100万個程度は存在しているとされており、一般的かつ平均的な日本人の顔面積が約330cm2であることから、3億3000万個のアクネ菌が顔にいるということになります。
脂質を好んで食す性質なため、脂っこい食事を多くしていて、脂汗が多くなってくると、アクネ菌が食べる皮脂が増えるので、アクネ菌も増殖してニキビになりやすくなります。
ニキビの正体がこの子。適量なら大丈夫。
マリー
平常時は、アクネ菌が生産するプロピオン酸や脂肪酸が皮膚を弱酸性に保つため、皮膚をその酸性で守ってくれています。蛍光性があるポルフィリンも生産するため、アクネ菌が多い部位ではブラックライトを照射すると薄っすらと色が見えることもあります。
【参考】
ヤクルト中央研究所
https://institute.yakult.co.jp/bacteria/4234/
東京医療保健大学
https://www.thcu.ac.jp/research/column/detail.html?id=110
皮膚に起こる感染症等
皮膚に起きてしまう感染症は大雑把に分けると以下のとおりです。
細菌性皮膚感染症
ウイルス性皮膚感染症
真菌性皮膚感染症
- athlete’s foot(水虫)
- yeast infection(カンジダ症)
- ringworm(白癬)
- nail fungus(爪真菌症)
- oral thrush(口腔カンジダ症)
- diaper rash(おむつかぶれ)
寄生性皮膚感染症
参考サイトにもある通り、皮膚に起こるトラブルは多種多様で、いつ、どんな原因で起こるか分かりません。不潔にしていて、免疫状態が悪くなっていれば誰でも表皮菌に負ける可能性があり、不潔な状態で怪我をすれば、そこから寄生虫や細菌が体内に侵入して病気になることもあります。基本は清潔な環境と免疫を高める生活が大切です。
参考:Skin Infection: Types, Causes, and Treatment
https://www.healthline.com/health/skin-infection
参考・出典
The Value and Duration of Defence Reactions of the Skin to the Primary Lodgement of Bacteria
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2082171/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14832419
Distribution and Persistence of Staphylococcus and Micrococcus Species and Other Aerobic Bacteria on Human Skin
https://aem.asm.org/content/30/3/381.short
雑色皮膚科
https://www.zoushikihifuka.com/disease_04.html